(2002年11月17日sun)

最終回@
ゴメンネ・マイ・ダーリン」

あの日から約1ヶ月、傷は順調に回復し、ようやく詳細を語れるまでになった…。
だから、今話そうと思う。

それは本番3日目の夜の出来事だった。
既に4ステージを終え、残りも4ステージという丁度折り返し地点でもあったこの日、その事故は起こった。
いつもの様に本番を終え、いつもの様に打ち上げ会場へ向かい、いつもの様に皆と自身をねぎらい、勿論自分は車ですから≠ニ勧められる酒を断り烏龍茶を頼み、終電でお開きになり、それを逃した人を送ってあげる。そして一日が終わる。
そんないつもと変わらない、特に何かが特別だった訳でも、予兆があった訳でもない、そんな夜だった。
ただ、今に思えば、それが当り前過ぎて、自分が気付けなかっただけなのかも知れない。
確かに僕は、心身共にかなり疲弊していた。

第三京浜を横浜の自宅方面に向けて走行中、突然睡魔に襲われた。居眠り運転で怖い目に遭った事は少なくないので、僕は車を停め、仮眠をとる決心をした。昨日はそれで車中泊をしてしまい、結局帰れなかった。今日こそはそういう訳にはいかないのだが、事故るよりはいい。そう思いながら車を一番左車線に寄せつつ80km/h台まで減速する。いかんせん高速道路なので、おいそれと停まる訳にもいかない。僕は適度に路肩が広く、視界が良好な場所を探しつつ車を走らせていた。…筈だった。
記憶は今もおぼろげにしかない。
目の前を重機(パワーローダー)がハザードを点滅させつつ低速運転していた。
そしてそれが、気が付いた時には2〜3m先に迫っていた。
慌ててブレーキを踏んだが、多分その瞬間に車は激突していた。“ドン”という激しい衝突音と、ボンネットがひしゃげる時特有の“メシャ”という破壊音が響いたが、正直僕自身がどうなったのかは全く記憶に無い。ただ気付いた時には、車内はエアバック作動時の火薬の匂いに包まれており、僕は激しい呼吸困難に見舞われていた。胸の辺り全体が押し付けられる様に痛み、呼吸が出来なかった。そして、これが単なる事故のレベルではない事を悟って、涙が出た。無意識に発せられた不意の一言はチキショウ≠セった。
目の前の重機からドライバーが降りて来るのが見える。別段慌てた素振は無く、こちらを覗き込んで何か言っているが、よくは分からなかった。そして恐らく携帯で警察に通報し終えたのか、煙草をふかし始めた。その様子からどうやら緊急を要する事態には見えないのだろう、その面倒臭そうな相手の態度が、かえって僕を安心させた。この胸の痛みも一時的なものであって欲しい。しかしゆっくりと起き上がろうとすると、激しい痛みに襲われる。ドアを開けようとしても力が入らない。それ以前にどうやらドアは車体全体の歪みのせいで開かなくなっている様だった。
ゆっくりと恐る恐る胸を触ってみる。大丈夫、大丈夫と思いながら。しかしその希望も、右肩に差し掛かった瞬間、文字通り「砕かれた」。鎖骨が折れている事は、触った時点で分かったからだ。
僕は激しく慟哭した。何よりも明日からの残り4ステージの事を考えると、自分に対する怒りと悔しさと焦りで気が変になりそうだった。“いっそシートベルトなんてしてなければ”…そんな考えにも、正直至った。

しばらくして反対車線をパトカー、消防車、救急車が次々と走って行く姿を見た。きっと何処かでUターンしてここにやって来るに違いない。胸の痛みは徐々に鈍い鈍痛へ変わり、やはり折れてなどいないのではと淡い期待感を募らせたが、その希望も身動き一つですぐさま絶望に変わる。そして、事故発生から30分、僕はようやく「救出」された。長い、長い30分だった。
レスキュー隊員がドアを壊し大丈夫ですか?≠ニ声を掛けてくる。その声に答え、僕は自力で立ち上がり車外に出た。僕は大丈夫だった。大丈夫だと思いたかった。しかし、周囲はそれを認めず、僕は担架に厳重に固定された。頭部を強打している可能性、頚椎を損傷している可能性、やはりどれも充分に考えられる程の、これは「大きな事故」だった様だ。
頭部と胸をテープで担架に固定し、首はコルセットで固定され、僕は救急車に乗せられ、現場から10分程にある『横浜労災病院』に緊急搬送される事になった。横たわると胸の痛みは格段と激しくなり、車が揺れる度、僕は呻き、顔を歪めた。
寒気と悪寒がひどかったが、気弱な態度は取りたくなかった。自分が重症だとは思いたくない。ただそれだけの理由で。
そして、自分がたとえどんな診断を下されようが、明日の本番を諦めない、決して諦めない。その決意だけで、不安に耐えた。
それがどんなに理不尽な思考だとしても、今はそうする事でしか、自分を保つ事が出来なかった……。
【to be continued……】


-今回の写メール-

今は懐かしき『数神/1』の出演者+演助の尾塚君
何だか色々あったが、皆仲良く、頑張ってくれました。ホントに有難う。
でも、この大人数で写メールは大分無理。ていうかゴチャゴチャし過ぎてキモイこの絵。