(2005年1月)


1日(土)
こんな忙しい年末年始は初めてだ。去年の12月はそれはもう色々あって、劇団の「戦後処理」からハッポウの稽古、かと思ったら急な映画の仕事でタイへ数日、飯はサイコーながらも、野犬に追われたり、現地で携帯を落したりと散々な目にあって帰国。さすがに体が悲鳴をあげダウン。稽古場ではテンション上げ過ぎて足を怪我。幸せを見つけてウキウキしてたと思ったら車の中で号泣してたり、みたいな日々が続き…ムキ〜〜〜ぃィ!!
…まぁ、忙しいにこした事ぁないし、それで食えるようになりたいんだから、ショーガナイ。せめて気持ちは穏やかに、精神衛生に気を配った一年にしよう!!

5日(水)
と言う訳で、久し振りに「書き初め」に挑む。といってもコレはハッポウの初日舞台挨拶イベントの一環であり、ココは本多劇場ではあるが。これはあくまで自分が穏やかに生きるための指針なのだ。精神を研ぎ澄まし、垂直に立てた筆も厳かに半紙と向き合う。
が、何も思い浮かばないので、とりあえずおいしいラーメン屋の看板をイメージする。そして緩やかにトランス状態へと移行する俺。見えたぁ!力強く一気に筆を走らせる。出来たぁ!!
…ん?
「果物を食う」と書いてる俺。果物全般が大の苦手という(珍しいとよく言われる)自分にしては豪胆な目標を掲げてしまったもんだぁ…が、アレ?いきなり脱線してねぇか俺?なぜこんな言葉を?しかし何の脈絡もない分、かえって力強い意気込みのみが際立つ。食えるのか…?嫌。いや、違う。これは「守るな!攻めろ!」という内なる神の啓示なのだ!俺と言う名の神よ、今年も無茶をせよというのですね。ハイっ!…勝負は明後日からじゃぁ!

♂日(汗)

ほぼ年明けと共に始まった「ツカエナイト」東京公演。ハッポウのお客さんにちゃんと受け入れてもらえるか若干不安はあったものの、拍手で笑われたのは久し振りだわぁ。嬉しいわぁ。芸人冥利に尽きるわぁ(ん?)。芝居全体も好評でホッと一安心。…が、あまりの反応の良さに「悪い癖」が、自分では良かれと思っているものの人からよく言われるところの「悪い癖」が出てしまったようで。…ハシャギ過ぎました。もちろん初日からアクセル全開だったんですが、自分の中になんか秘密の赤いスイッチを見つけてしまったようで、ちょっと押してみたらターボだったのでしょう。巨大な吸気音と共にボンネットからエンジンが飛び出し、マフラーから火が!
分かりにくい比喩で脱線して、話の本筋を見失いがちですが、「同じことが何度も出来るからこそプロ」だということを商業演劇で学んだんじゃないのか!俺よ!小ネタを足していくのも、アドリブかますことも、演出家や共演者に怒られない範囲でなら「悪」とはならないだろうが、楽しませる側が楽しんじゃイケナイ。いや、イイのかもしれないけど、調子に乗っちゃイケナイ。大体、出の直前に舞台ソデで意味なくテンションを上げて、(小林)愛ちゃんに「ヨシ!相撲とろう!」と言ってしがみつき、あげく出トチッてるなんてヤツは、役者云々の問題以前に神経がどうかしているとしか思えない。
どうかしてました。(猛省)

19日(水)
といった反省点も踏まえつつ、大阪初日。とは言え、そこは笑いに厳しい大阪のお客さん。こちらも気合を入れて望まなくては、と変に力んでオカシナことに。今振り返れば東京とそんな大差はなかったのかもしれないが、初日カルク凹む。東京じゃ拍手もろうて当然や思てるかもしれへんけどナ、ジブン…まだまだやでぇ。明らかに間違った大阪弁の俺が、鏡越しに俺を罵る。…飲みたい。楽屋で「今日はどっか行かないんですか?」と俺。「いや、今日は帰るわ」と大半の出演陣。あれ…?ミンナ意外とクール!…いや、劇団員のミンナは連日のハードスケジュールで疲れているのだ。
という訳で、一部の同志と共に音響小笠原さんの仕切りで寺田町にある美味しいギョーザのお店にタクシー移動。ここは4年前、劇団☆新感線に客演した時にも連れて来てもらった有名なお店で、その時もお世話になったスタッフさんが今回も多いことから、共に名物の一口餃子を何個も頬張りつつ、当時を懐かしく振り返る。
色々相まって、個人的にちょっとショッパイ酒となる。


例の『うまいギョーザの店』
タクシーに揺られながら、なんかこの辺見覚えあるなぁと思ってたら、やっぱり来てたココ!当時「大阪=お好み焼き」位しか分かってなかった自分が大阪で初めて連れて来られた店。

じゃ、とりあえず40個!
一つ一つがちっちゃいからオーダーの数字もスケールがでかい。でも食えちゃう。オイシイから。大阪って何でも美味いんだなぁと当時はスゴーク関心したものです。また来れてヨカッタ!

21日(金)
そんなこんなであっという間に大阪最終日。スケジュールの都合と体力の都合で、貴重な日中の自由時間を寝て過ごしてしまい、結局遊べなかった…。明日のマチネが終わったら、もう帰らなくてはならんのです。夜遊びするのも今日しかない…のだが、今日も全体で打ち上げることはなく、俺は愛ちゃんと(福田)チアキちゃんに誘われるまま、ホテル近くのバーで世界の地ビールなんぞを軽く飲む。そのうち、「じゃあ部屋飲みするか」ってな話になったのだが、急激に酔いが回り始め、早々に部屋に戻る。そして東京に電話なぞしているうちに眠気に襲われ、今日はもういいやってことで、そのまま寝る。
ふと目が覚め、気が付けば深夜。シャワーだけでも浴びとかないと、と思い風呂に立った瞬間、突然ドアをノックする音が。女の声?まさか!これがウワサに聞く「夜這い」の風習なのか!?生唾を飲み込み、バスタオルを腰に巻く俺!一瞬の躊躇、いや、しかしこれがハッポウ流の客演のモテナシなのだ!ならば断るのはシツレイに当たる!空想葉巻にブランデーグラスを回すマイムをしつつ、紳士な態度でドアを開ける俺!悲鳴!ドアを閉める俺!あれ?
誤解を招く妄想記述で本筋を見失いがちですが、どんどん俺の部屋に人が集まってくる。俺の部屋で?今から?そうだっけ?あー…ねー!
こうして、深夜の部屋飲み大会が始まった。最初は女優陣4人に俺1人のハーレム状態で、挙句全員掛かりでマッサージしてくれるなんて、これはもうマハラジャだな!と思ったが先か、全身に激痛が走り苦悶にのたうつ男の姿が。…自分の身体に相当ガタが来てるという事実に打ちのめされ、それどころじゃなくなってしまった。逃げるように攻守を交代し、結果ただのアンマさんと化す俺。そのうち男性陣も集まって、「くるぶし近くにある『生殖器のツボ』を押す大会」に。結果、ほぼ全員が尋常ではない激痛に見舞われ、自分のデリケートな部分の衰えに、カルク凹む。
…で、結局みんなが自室に帰って行ったのは、ど夜中もいいとこだったのだが、明日(今日)の千秋楽は大丈夫なのか?

なんとか、大丈夫でした!総評として大阪のお客さんも喜んでくれたみたいで、カーテンコールで紹介された時に頂いた拍手はホントに暖かかったです。大阪の皆様、また来ます!来られるようにもっと頑張ります!有難うございました!

部屋飲み風景
女性陣が比較的身を守るように寄り合っているのは、「え?みんなノーブラ・ノーパンだよ」という愛ちゃんの一言で男達の思考がロックしたから、ではございません。断じて!

23日(日)
大阪から帰って来て、早々、NODA・MAP『走れメルス』を観に行く。終演後出口に居ると入江(雅人)さんに声を掛けられ、一緒に楽屋へ。出演者の皆さんやスタッフさんに挨拶をし、松村(武)さんや小松(和重)さんや腹筋(善之助)さんの楽屋で「まあ座ってビールでも」と勧められるも、ココ浅野(和之)さんの鏡前じゃん!と当の本人が帰って来て「おう!いいからいいから!」と。「いいんだよ、この人ボケてるから。」「うるさいよ!」あれ?浅野さんいぢられキャラだ。
その後、古田(新太)さんがやって来て、「串揚げ大会やるけどコッテン来るよね?」と言われたので、お言葉に甘えて参加することに。
そして女人禁制宣言よろしく男共はゾロゾロと連れ立って串揚げ食べ放題のお店へ。ここは串揚げをテーブルに据付の油に自分で串を突っ込んで揚げるセルフのお店で、それ以外にもうどんやらカレーやらとにかく色々食べ放題の「夢の時間」を提供してくれる。で、傍目には悪夢のように片っ端から食材を食らい、そして飲む男達の怒号が。この人等タフだ。
ふと、松村さんが「お前稽古場で評判悪かったぞ」と言う。え…?「野田さんが駄目出しの時、『小手みたいなことするな』ってなぁ?」「(全員)ガハハハハ!」ちょっと待って下さいよ!え?マジですか?隣に座って初対面の俺に対しても甲斐甲斐しく接してくれていた(中村)勘太郎さんの目を見る限り、どうやらホントらしい。「お前は前へ前へばっかりだからな!」「(全員)ガハハハハ!」まさか、人知れず自分がそんな扱いになっていたとは…。ガクンと落ち込み、急激に食欲を失う俺。ボク…もう、お茶漬けにします。独り席を立ちお茶漬けを作る。あ〜あ、俺もうNODA・MAPねぇな〜。素敵な位一杯あるおしんこを全部乗せ、「夢の豪華茶漬け」で心を癒す俺。席に戻り一口。しょっぱ!次の瞬間全方位から集中砲火。「分かるやろ!」「全部乗せるからだ!」「欲張り!」「アンサンブルってもんがあるんだよ!」「そうやってお前は全てを台無しにするんだ!」「そのお茶漬けはお前なんだよ!」ああ…あああ!
言い得て妙!笑ってしまう程心当たりが!

…泣きましたよ。辛くて食えないお茶漬けを頬張りながら。これは俺だと噛み締めながら。
ああ、夜の小雨がヒドク身に沁みたなぁ。いじめられた?…いや、学んだんだなぁ…。一杯のお茶漬けから。(コレ美味しんぼ?)

24日(月)
今日は「innerchild新年会all night in早稲田『カフェ・レトロ』」。最新『青ゐ鳥』から『数神1・2』や『ハダノシタ〜』等、過去の作品にご協力頂いた出演者・スタッフさん達が入れ替わり立ち代り大勢集まってくれた。仕切りは宍倉。俺は多忙を理由にノータッチだったのだが、この男、結局誰が何時来て最終的にどのくらいの規模か報告を怠り、挙句現場でフリーズ。軽く憤り小声で説教。もし、今この行事を知った関係者が居たらホントにすみません。
主宰の肩書きもあるのでハメも外せず、緩やかに酔っていたかったのだが、ウチの芝居を御贔屓にして下さるここのオーナーさんが、おもむろに『PANGEA』のビデオをプロジェクターから流したりするもんだから、へべれけに酔ってしまいたい気持ちになる。赤面する旗揚げメンバーと、悶絶する映像作家(神戸)ちぎの表情。あれから、4年。そして今年で旗揚げ7年目なんだなぁ。…よし!…エロしりとりしよう!!

Θ日(疲)
次のつくば公演までしばらく休めると思ったら大間違い。3月のナイロビ・三鷹プロデュース公演の稽古がはじまってしまいました。またムニエルならではの「無理にでも面白いことを考えなければならない」日々が始まる。芸達者な少数精鋭公演は稽古を見てるだけでもわくわくするものだが、舞台を面白くすることと、面白いことを舞台にすることは根本的に違う。大変そうな先行きを思い軽くパニック。

30日(日)
冒頭にも触れたタイでのロケでお世話になった映画『星になった少年』が無事クランクアップし、都内ホテルにて打ち上げが行われるとのお誘いを頂き、すごく迷った末に出席させて頂くことに。だって、参加したといってもほんのチョイ役だし、第一そんな厳かに行われる会に自分ごときが伺ってよいものか?…ってゆーか純粋にもうコワイんです。人見知りで小心者の私にとって、そういう華々しい場所は!でも、マネージャーも同伴すると言ってるし、折角のお誘いを断り挨拶も無しというのは、この世界を生業とする人間としてどうかとも思うし、ウロウロしてたら(高橋)克実さんに会って、「おうっまた後でな!」って言われちゃったし、意を決して会場へと向かった。
…が、待てど暮らせどマネージャーが来ない。携帯も繋がらない。
まずい、もう始まってしまう。…やむを得ない。目に涙を溜めつつギクシャクと受付へ向かう。先ずは現地でお世話になった制作さんに挨拶。この度はお世話になりました。ナイロビの小手伸也です。すると、「どうもご無沙汰しております。どうぞごゆっくり。ハイどうぞ。」といってビンゴカードを渡される。
ビンゴぉう!!…やたら馬鹿ヅキで祝いの席々で場違いに「特賞」を当てまくってしまった一昨年の記憶がフラッシュバックする。こんなところで何か当ててしまったどうしよう…。更なる不安を抱えドアを開ける。そこに広がるのは多くの芸能関係者及びスタッフさんとスーツ組、そして豪華な料理の数々。完全に立ちすくむ俺。おおよそ部屋の中心になど行ける筈もない。何をどうしたらいいのかサッパリ分からなくなり、蛇に睨まれた蛙よろしく硬直して脂など出していると、やがて制作会社の進行と共に河毛俊作監督が壇上へと上がり、乾杯の音頭を取る。そうだ。少し酔ってしまおう。すかさずウエイターさんからビールを受け取り、いざカンパーイ!
…駄目だ…味がしない(泣)
もはや絶望的な気持ちで部屋の隅に、出来るだけ隅に腰掛ける俺。すると、その様子をすかさず発見した克実さんが少し離れたテーブルから声を掛けてくれた。「ちょっと小手くーん!ちゃんと食べてる?」…あ、はい。い…イカン。目上の人に気を遣わせてどーする!行かなくては…せめて料理くらい取りに行こう。が、気持ちとは裏腹に相変わらず隅っこで小皿に盛った料理をチミチミ食ってる小動物=俺。見かねた克実さんが遂に傍にやって来て腰掛ける。「なんだよ、全然飲まないの?」いや〜緊張しちゃって…「何言ってんだよ。タダなんだから!」克実さんのアンマリに克実さんらしい態度に少しホッとし、しばらく話す。すると今度は(常盤)貴子さんが「あ〜小手さ〜ん!元気〜?」とやって来るではないかぁ!思わず起立して迎える俺。「お前!俺ん時は立たなかったのにナンダよぉ!」あ…(しまった)スンマセン克実さん。そう。この御二人とは以前、野田(秀樹)さんのWSで一緒だったのだ。
克実さんが離れ、今度は貴子さんと二人並んで腰掛ける。くつろぎモードで、映画のことや舞台のこと、俺がタイで野犬に追われたことなどダラダラ喋る。貴子さんは「なんか、居場所に困るね」と言って笑顔を見せるが(それには完全に同意したいんだが)、主演女優がそんな筈もあるまいし、第一こんな隅っこで俺なんかとずっと話してて良いのだろうか?…良いということにさせて下さい!生きた心地がするんです!…いや、やっぱ駄目だよな…。みんな彼女にサインやら写真やら求めてやって来るし。隅っこまで。
覚悟を決めて監督の許へ挨拶に行く。ポカンとする監督。そりゃそうだよなぁ…覚えてないって。貴子さんが「野田さんのWSで一緒やったんですよ」と一言。「ああ、そうなんだ」と笑顔の監督。「でも俺、野田さんのお芝居って―――んー書けません!!
とりあえず、最終関門を突破した気がして、一安心。1次会も締まったようだし、『心労』と書かれたメーターが既に振り切れているし、先にオイトマさせて頂く。ちなみにビンゴ大会では、かなり早い段階でトリプルリーチがかかりガクガク震えたが、何も当たりませんでした。メデタシメデタシ…。


『出演者ご挨拶』
初めての未体験空間に戦々恐々としながら出来るだけ遠くの隅っこでから、壇上でスピーチをする克実さんをじっと見つめる。複数の意味で遠い…。

救世主光臨!
あまりにも有名過ぎな方々に対してはコチラで「自主規制」させて頂くことにしました。
(こんなんで許される訳が…。)
この幸せを伝えたくて!